@IT副編集長 西村賢さん
花王株式会社 美崎栄一郎さん
弊社@IT副編集長の西村賢さん、書籍「iPadバカ」の著者である花王株式会社の美崎栄一郎さんのお二方は4月4日、ソフトバンクグループの共同研修セミナーにて、グループ新入社員350名に向けて講演を行った。
西村さんは「クラウドとは」というテーマでクラウドコンピューティングの現在と未来について語り、美崎さんは「デバイスの1つiPadの活用」というテーマでビジネスシーンにおけるiPadの有効活用の仕方について、会場のビジネスパーソン一年生たちに向けてレクチャーした。
この記事は三部構成とし、第一部では西村さんのお話の要約を、第二部では美崎さんのお話の要約を、第三部では実際に参加した私が講演を通して何を思い、何を考えたかを記していきたい。
第一部:クラウドまとめ 2011年春
@IT副編集長 西村賢さん
【なぜクラウドは重要か?】
ソフトバンクの孫社長が言うように、“デジタル情報革命”は今後長いスパンで実現してくる。そして、デジタル情報革命の二つのエンジンとなるものが「デバイス」と「クラウド」である。今日は、そのうちユーザーに見えづらい概念であるクラウドについて説明していきたい。
【クラウドは何を変えるか】
見えづらいクラウドの中でも、消費者にとって一番理解しやすいものとしてはSaaS(Software as a Service)というクラウドの種類がある。すなわち、サービスとしてWeb上でソフトウェア(例えばメールやストレージサービスなど)を提供するクラウドである。
そうしたクラウドでは現在、写真共有を例に挙げると[カメラで撮る]→[PCで保存]→[クラウドで共有]という流れが主流になっているが、今後のクラウドではPCを介さず、[カメラで撮る]→[即、クラウドで共有]というモデルに変わっていくだろう。そのことによって、例えばカメラからはメモリーカードなんていらなくなるだろうし、消費者のライフスタイルも大きく変わっていくのではないだろうか。
クラウドとサーバの本質的な違いを説明する上で、一つの答えとなるものに「分散コンピューティング」がある。分散コンピューティングとは複数台のサーバが協業して効率的に一つの業務に取組むことであって、それはただのサーバの寄せ集めとは違い、何億人単位のユーザーや何万台単位のサーバを支えるうえで圧倒的なハイパフォーマンスを実現する。また、構成するサーバの1台や2台が壊れても影響がないことから、障害に強いのも分散コンピューティングの特長だ。分散コンピューティングの面白い例として、「月を追いかけるGoogle」という話をしたい。米Google社は世界中にたくさんのサーバを持っているので、常に地球上で夜の地域のサーバだけを使って計算をすることができるのだ。それによってGoogleは電気代などのコストを大きく切り下げ、「無償+広告モデル」のサービス提供を世界中の数億人に対して行えているのである。
【クラウドの種類と歴史】
先に説明したSaaSの他に、クラウドにはPaaSと呼ばれるものや、IaaSと呼ばれる種類のものもある。
PaaSとは「Platform as a Service」の略で、エンジニア向けの開発プラットフォームのクラウドのことだ。エンジニアにとって、過去は開発のたびにいちいちサーバを立ててという作業が必要だった。しかし、今ではPaaSを用いることで、そうした手間から解放されている。また、IaaSは「Infrastructure as a Service」の略で、サーバなどのITインフラのクラウドのことだ。それによって、複数のサーバを一つ一つ立てる必要はもはやなくなった。一つのクラウドサーバの中に、仮想的にいくつものサーバを立ち上げる事ができるからである。
ソフトの入手方法別にコンピューティングの歴史を振り返ると、かつてのホストコンピュータ時代は付属の独自ソフトという選択肢しかなく、それからPC+サーバ時代になるとパッケージ型のソフト流通が主流となった。そして、これからのスマートフォン+クラウド時代になってくると、はじめにSaaSを紹介したように、ソフトはネット越しで利用するのがスタンダードになるのである。
【クラウドと同等に大事な2つの変化】
まず第一に、「ソーシャル化」という変化の波が押し寄せている。Web上における情報過多のこの時代において、ユーザーが情報を得ようとする際にも人間関係に基づくフィルタリングを必要とするようになった。そんな大きな変化の中において、現在起こっているのは「ソーシャルグラフの奪い合い」という現象だ。SNSなどはユーザーの人間関係を1つの情報網として獲得することで、そうしてWeb上に表される人間関係(=ソーシャルグラフ)を活用したサービスを次々に展開しようとしているのである。
第二の変化は「リアルタイム化」である。すなわち、情報通信技術の進化によってユーザーのPCが常にサーバとつながっていることが可能になったことで、従来とは段違いの超高速インターネットが実現することだ。
以上の二つの変化とクラウドが結び付いたとき、ユーザーは今までに経験したことのないようなインターネット体験をすることになるだろう。
第二部:デバイスの1つiPadの活用
花王株式会社 美崎栄一郎さん
【iPadとソフトバンク】
孫さんがiPadやiPhoneをいかなる手段をとってでも必要としたのは、iPadがソフトバンクのビジネスにとって必要だからである。つまり、新入社員であるここの350人もどんどんiPadなどを使い倒し、ソフトバンク社員としてiPadの普及などを押し進められるようにするべきである。
【iPadへの希望】
たとえば現在iPadは外付けのキーボードを使わないと、日本語の入力がとてもしにくい。これは英語入力を前提として作られたデバイスであるからで、このことを不便に思っている日本人は多いはずだ。しかし、孫さんであればこの問題を改善できるかもしれない。なぜならば、iPhoneに絵文字を入れたのはソフトバンクであり、日本のユーザーの期待に応えたのは孫さん自身だからだ。今後iPhoneが他社でも出すようになっても、そのiPhoneに入っている絵文字はソフトバンクの入れた絵文字であり、それはソフトバンクとしての強みなのだ。
同じようにiPadにおいても、日本語入力がしにくいという問題はつまりビジネスにおけるチャンスである。そこを真っ先にソフトバンクが改善する事ができれば、ソフトバンクの新たな大きい強みになるのではないだろうか。
【ソフトバンク社員として】
パソコンよりも、iPadは人に見せることに適したデバイスだ。これをうまく使えば、面白い事ができるかもしれないし、友達にiPadを見せたら人気者になれるかもしれない。
吉本興業の芸人さんであれば人を笑わせられて当たり前のように、ソフトバンク社員だったら、iPadを使ってスゴイ事をしてみせられるのが当たり前なのではないだろうか。だからこそ、友達にiPadを見せるときなどに面白いアプリを見せてあげたりできるように、常日頃からiPadの面白い使い方を研究しておくべき。アプリもいっぱい入れて、まずは自分でどんどん使ってみることが大切だ。
コンビニと同じ事が、iPadでもアプリを使いこなせばできる。コンビニが初めて出てきたときのあのビジネスへの衝撃を、iPadでも起こすことができる。そのためにソフトバンク社員として、今あるサービスだけでなく、iPadでこんなことをしたい、できればいいのに、という事を考えていく事が重要だ。
【新入社員350人に向けて】
ソフトバンクは変化に富んでいて、絶対に楽しい会社だと思う。だからこそ、この楽しい会社の新入社員であることに誇りを持って、仕事を楽しんで頑張ってほしい。
第三部:新入社員は何を思ったか
まず西村さんのお話を聞いて思ったのは、なんとなくわかっているつもりになっていた「クラウド」という概念に対し、自分はまだまだ無知であったということだ。なんとなくこういうもの、という漠然としたイメージは持っていても、実際にビジネスの場でどのようにクラウドが使われているのかや、クラウドの今ある状況やこれからの展開などについては知らないことばかりだったことを思い知った。
そして美崎さんのお話を聞いて、自分はせっかく会社から配布されたこのiPadというデバイスについて、もっともっと愛着を持って接していかなければならないと思った。美崎さんは「このアプリを使うべき」などといった言い方はせず、「どんどん自分なりに使ってみよう」というような語りかけ方をなさっていた。つまり、その場に居合わせた350人の新人それぞれに、iPadを楽しんで使う中でどんどん自分なりの面白さを発見していってほしいと願っているのだと感じた。
お二方の話をそれぞれうかがってもっとも感じたのは、西村さんと美崎さんの両者がともに「ソフトバンクグループ社員ならではの使命」というところを根幹においたご講演をなさっていたのではないかということだ。
西村さんは、ソフトバンクが提唱する『デジタル情報革命』の二つのエンジンは「デバイス」と「クラウド」であるとおっしゃり、その片方であるクラウドについてわかりやすく説明してくださった。そして、美崎さんはそのもの片方である「デバイス」、つまりiPadについて、自ら楽しんで学ぶ姿勢をレクチャーしてくださった。それら二つの講演を通して受けたことが示すのは、まさにソフトバンクの企業理念にも掲げられている『デジタル情報革命』の牽引者に、我々350名のグループ新入社員がなっていくことが期待されているということなのだと思った。
私はソフトバンクグループの中においてもメディアというとりわけ特殊な立場であるアイティメディアの新入社員ではあるが、グループ全体としての使命を常に胸に抱きつつ、その中で自分の役割を果たす努力をしていきたいと改めて思った。
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