こんにちは。にけです。そろそろ配属されて2ヶ月が過ぎようとしています。記者という職種になってから、さまざまなニュースサイトを見る目が少し変わったような気がします。
今回は日本最大の知名度を誇るニュースサイト「Yahoo!ニュース」のトピックスについて編集部の方が記された本である「ヤフー・トピックスの作り方」(奥村倫弘著・光文社新書)の書評を書いてみました。新人記者として、タイトル付けなどの勉強のつもりで買ったのですが、読み物としても非常に面白く出来ているのでおすすめです。それでは以下、書評です。
この本には、ヤフー・トピックスの歴史、トピックス作成者の仕事、トピックス作成の留意点といったライトな話から、ニュースの価値、メディアの価値、といった根源的な話まで幅広く扱っている。文章も分かりやすく、なじみがあるテーマなので非常に読みやすい。好奇心を満たす読み物としての完成度も高く、好感が持てる。
●キュレーションメディアとしてのヤフー・トピックス
トピックスは「キュレーション」という概念と非常に相性が良いと思う。トピックスは、専門の編集部がニュースサイトからフィードされる無数のニュースから、トピックスに載せる価値があるもの(基準は選者によって異なる)をピックアップし、情報をより深く理解するための「関連サイト」を付加し、余計な情報を削ぎ落とした13文字のタイトルを付ける、といったような手順で作成される。
数多ある情報(ニュース)から、選者なりの基準で価値あるものをピックアップし、リンクやタイトルという付加価値を付ける、という過程は正に「キュレーション」そのものではないか。トピックスの選者は、それぞれがスポーツや政治、など得意とするジャンルを持ったキュレーターの役割を果たしている。また、彼らは新聞社や放送局での勤務経験を持った30歳前後の人がほとんどで、クオリティも担保されていると言える。そのおかげで、読者は安心して(信用して)ニュースを読むことができるのだ。ヤフー・トピックスは、数多くのキュレーターで作る、キュレーションメディアという認識が妥当なのではないか。
本書の中でも
「情報が整理されて集まることで力が生まれるんですよ」。伊藤はインターネットならではのニュースの見せ方を追求しています。(p.68)
とあり、ヤフー・トピックスのみならず、インターネットのニュースサイトが「キュレーション」の役割を果たしていることを示している。これは新聞なら紙面の都合、テレビならば尺の問題といったような「情報量の限度」に縛られないというインターネットの特性に起因するものだと考えられる。
●キュレーションの必要性とは
最近ではRSSリーダーなど、自分で入手する情報を設定・制限する方法が増えてきた。これも情報過多の時代の1つの解決策といえるのだが、いまひとつ浸透していないように感じる。Yahoo! においてもニュースのパーソナライズに取り組んできた経緯があるものの、どれも成功していないという。例えば、記事検索サービスに自分が気になるキーワードを登録しておける機能や、トップページにRSSリーダーの機能を付けてみたものの、利用者が全く増えなかった。「あなたにおすすめの記事」というレコメンド機能も利用者はあまりいない。この理由について、奥村さんは本書の中で以下のように述べている。
単純にめんどくさいという理由もあれば、選択肢が無数にある場面では誰もが自分の趣味や関心事を言葉にできるとは限らないという事情もあるのでしょう。(p.178)
RSSリーダーなど、ニュースのパーソナライズサービスは『自分の意思を言葉にできる上級者向けのサービス』と奥村さんは位置づけているが、結局それを使ったところで「自分の関心のある分野に絞ったところで、結局一日で読みきれる分量にはまとまらない」(p.180)のである。
そんなとき、心の中でこう叫ぶのです。「ああ、誰か読むべきニュースを整理して教えてくれればいいのに!」。
結局、誰かがニュースをフィルタリングしてくれるのを待っている自分に気づきます。これからの時代は、フィルタリングされたニュースのパッケージングが多様化してくるのでしょう。おそらく、機会が抽出したニュース群を読みにかかるよりも、自分と感性の似た編集者が抽出したニュース群を読む方が安心できるような気がします。(p.180)
奥村さんの言葉は、キュレーションの本質、そしてキュレーションの必要性を的確に突いているように思う。また、キュレーションの問題として「自分に関心のある範囲に収まったニュースしか集まってこない」というタコツボ化という問題があるが、ヤフー・トピックスはそれを解決する可能性を持つメディアであるとも思う。
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