今回の研修レポートは、4月4日の朝一で受けたアイティメディア株式会社取締役の藤村厚夫さんの講義について。テーマは「21世紀のメディアビジネスを考える」ということで、メディアを取り巻く環境が今どうなっているのか?そしてこれからメディア、メディアビジネスはどうなっていくのか?という視点で講義をしてもらいました。
以下、内容のレポートです。自分で情報を整理しているので、もともとの講義の内容そのままというわけではないということを先に言っておきます。尚、『』内は僕の考察です。
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○メディアとは何か?
辞書的な意味では媒体(何かと何かを繋ぐもの)であるが「情報を伝える媒体」という捉え方が個人的にはしっくりくる。
情報を伝える媒体というのは、
物理的・経済的・機能的という側面と、
どのように・ 誰に向けて・テイストなど「方法」に関する側面と2つある。
ということで、メディアとは情報の外見・器といったようなイメージ。
『メディアとは、得体の知れない情報というものを何らかの方法で具現化する(受け手に対して伝えることができる形にする)、その何らかの方法の部分、のことを指しているのかな、というイメージ』
○コンテンツとは何か?
コンテンツとは「ひとまとまりの情報そのもの」であり、1つ1つの記事など、受け手が直接経験する単位であると考えられる。もちろん、記者が書く記事はコンテンツではあるが、価格.comやGoogleやYahooニュースなど、様々な情報をまとめただけのものもコンテンツと呼ばれるだろう。
このように考えると、コンテンツは情報の“実体”ということになる。
今までは情報を伝達する媒体(新聞など)が与えられたもの・決められたものであることにより、コンテンツに評価のスポットが当たらなかったため、情報の形式がメディアの価値であるという考え方が長く続いたが、今後、インターネットの普及などの理由でコンテンツが形式から分離可能(形式とセットでは捉えられなくなる)になり、コンテンツがメディアの価値を決めるような時代になり、ビジネスの多様化というインパクトが社会に対して起こるだろう。
3月に起きた大地震もこういった流れを加速させるファクタになるかもしれない。東北のインク工場が機能を停止させた。また、被災地へ情報を届ける方法として、河北新報社もpdf形式で紙面を提供している。
『pdf化、というところで思い出したのはオカムラ製作所のオフィスラボという未来のオフィスの研究(http://www.okamura.co.jp/company/topics/office/2009/office_labo.php)だ。オフィス内で紙を極力使わずに省スペース化に成功している。人と人とのコミュニケーションの手段として紙を使わなくなってくるのかもしれない。』
○いま、メディアにどういう変化が起きているか
新聞・テレビの業績が悪化しているが、一方でネットの状況は楽だというわけではない。リーマンショック以降、多くの会社が広告宣伝費について見直し、シビアになっている。マスメディアより影響力・効果が高く安価なものを模索し、そちらへと移行するかもしれない。
というわけで、今、古くから続いてきた「メディア産業」の基盤が揺れている。これが大きな変化の1つめ。次に、自分自身がメディアを創る、自分がメディアに参加する時代になるという「ソーシャルの台頭」というインパクトが起きている。
現在、FacebookがGoogleのPVを抜いてしまった。Yahoo! からの情報のフィルタリングの時代を次のように追っていくこともできる。
Yahoo! ⇒権威が情報を最適化してくれる
Google ⇒機械が情報を最適化してくれる
Facebook ⇒ソーシャルが情報を最適化してくれる
よって、ソーシャルが台頭する時代に適合するメディアビジネスはどういうものか?ということが現在のテーマとなっている。ITmediaも読者との間にαブロガーを挟ませるスタイルへと移行。口コミなどの効果を狙うスタイルへと変化している。
『ITmediaはブロガーのキュレーションを行っているようなイメージを受けた。ブロガーは情報をキュレーションし、ITmediaはそのブロガーのキュレーションを行うイメージ。』
ここで、従来型の情報提供と、ソーシャルを用いた情報提供の特徴を比べてみると次のようになる。
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従来 種類は少ない トップダウン 品質は一定 冷静・客観
ソーシャル 種類が多い 等身大 品質は不均質 共感・共鳴
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以前と比べて、個人のオピニオンが自由に打ち出せる時代になった。だが、今回の震災のときのtwitter(~である、~べきだというような意見ばかりが出てきた)のようにマイナス面も出てくる。
『オピニオン、という側面では2chあたりが最初だったのかもしれない。匿名であったが故に、個人の意見を(誹謗・中傷もあったけれども)自由に言える場所だったのかも、現在はそれがブログに、そして実名で行う場合も増えてきたのだろう』
3つ目は、スマートデバイス、ユビキタス時代のインパクト。スマートデバイス(iPad/iPhoneなどなど)の登場により、人々の情報の消費スタイルが変化する可能性がある。もしかすると、パソコンで情報を取得する、ということもハードルかもしれない。
また、これからの時代は多くのデバイスを使い分けるということを想定しなくてはならない。
『だからこそ、デバイスごとのUIが大切になる。UIにスポットが当たる傾向はますます加速するだろうと思われる』
スマートフォンがインターネット時代の大きな変革を起こすかもしれない。これからは「その時、その“文脈”」にフィットした情報の受発信が大事になるだろう。
『リアルタイム・ジオタグに注目したサービス、アプリ(コロプラ・Foursquare)に人気が集まっている現状を考えても、これからの情報の価値のあり方というものが変わってくるのかもしれません』
○そんな時代のメディア人・クリエーターのあるべき姿とは?
メディア人・クリエーターの仕事というのは複雑になり、高度化している。
例えば、
デザイナーはプログラマ的な要素を孕むようになっている
編集長(プロデューサー)は建築家のような要素を孕むようになっている
編集記者・記事=営業パーソンの要素を孕むようになっている
もしかすると理系的な視点を持つのが大事になるのかもしれない。
『編集長というのはキュレーターのような役割を負うことになっていると思っていたが、更にユーザーが情報に触れる体験・経験というものをデザインしなくてはならないという立場になっているようにも感じた。そういう意味で建築家という言葉は良く合っている!』
ということで、21世紀のメディア人のあり方は、
・デジタルスキルが必要になる
・ミクロな視点もマクロな視点も
・想像力(創造力)の半分はデジタルへの接点から生じる
上記のような要素がポイントとなるだろう。
最後に、メディア企業におけるこれからの前提として覚えておいてほしいこと。
1 メディア企業が払う最大のコストは人間
2 メディア(企業)は出版社・雑誌社のみを指すわけではない
3 コンテンツは無限にある
4 テクノロジーの進化は無限
5 広告の表示単価は低減
3・4が特にメディアの運営におけるカギになるだろう。そして、世の中の変化に対応するために、既存のモノの定義を見直すこと、より多くの視点でモノを捉えることがメディア人として重要になってくる。
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以上が内容のまとめです。内容が濃くて、上手くまとめられているか不安ではありますが…ということで今回の研修レポートは以上です!
藤村です。ありがとう。まとまりと最新トレンドに対する関心がよく分かりました。
ところで、他の方にも共通する聞き落としがあります。
それは、PC(でデジタルコンテンツを)で読む行為は、自分らが考えているほど透明性が高い振る舞いではなく、これまた、不自由で特定の文脈でのみ成立しやすい体験だということ。非PCの波がどうやってきそうかが、まだ頭に入っていないという感覚を持ちました。
投稿情報: Atsuo Fujimura | 2011/04/13 23:07
Back in school, I'm doing so much lerainng.
投稿情報: Joey | 2012/02/22 17:50