帚木蓬生 「閉鎖病棟」 (新潮文庫)
552円
人の尊厳、生きることの尊厳ということを考える。グッと胸にくる。
最後の裁判のシーンには涙。
最後の解説で逢坂剛がこう書いている。
“この作品を読んだ読者は、精神科の患者たちがしばしば私たち以上に、純粋でまともな心の持ち主であることを知り、(中略)むしろ異常なのは自分たちの方であって、もしかすると彼らのほうが実は正常なのではないか、という気さえするだろう。逆にそのような不安を、たとえ一瞬でも感じない人がいるとするならば、むしろ私は不安を覚える。”
松戸の駅前で、(おそらく)知的障害を抱えた人たちが、毎朝、施設に向かうバスを待っている。彼・彼女たちは、毎朝毎朝、屈託の無い笑顔でお互いに挨拶をし、楽しそうに話をしている。いつでも、そうだ。
その直後に駅のホームで目にするのは、電車で自分が座る座席を確保するべく人を押しのけるのに必死な健常者の人たち。優先席でもお構いなしだ。
異常と正常は、多数決で決まる。これは仕方のないこと。決して間違っていない。
知的障害を持っていれば、少数派につき、正常ではないほうにカテゴライズされる。
だけれども、それは正常とされた者が正常な想像力を持つべく努力をした結果なのであろうか?
決してそうではないだろう。
自分は、屈託のない笑顔で毎日挨拶をし、人と話ができているだろうか。そんな正常な生き方が、いつから難しくなってしまった。
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