目の前に選択可能な機会が多く提供されるほど、その機会を積極的に活かす人と活かさない人とで、経験と成果の差がどんどん開いてしまう。
採用担当の方々が、今の活発な学生さんを見て、そう感じることも多いのではないかと思います。そしてそれと同じことが採用する企業側にもそのまま当てはまり、経験の差がどんどん開いていく。そんな危険性がますます大きくなりそうだ---というのが今回の話です。
話のとっかかりは、「スマートフォンがPCの出荷台数を2012年に抜く」という事実からです。
最近になって、複数のリサーチから、同様の予測が出はじめました。
これは、人々が情報に接触するきっかけや総時間について、PCよりスマートフォンのほうが多くなるということであって、「就活生/転職希望者の情報接触だけは、この流れを無視して良い」というものではないでしょう。
自社の情報にどれだけ多くアクセスしてもらえるか?、とか、どのようなコミュニケーションによって他社以上のエンゲージメントをつくるか?という導線づくりにおいて、私たちは(PCからスマートフォンにマジョリティが移る、と)前提を変えていかなければならない。それが2012年からすでに必要ということだと思います。
そうなったときに、果たしてPCでやっていたのと同じコトを延長して考えればいいのか、もしくはまったく異なるロジックが優先されるのか・・・。現段階では事例があるものではないので、自分たちで考えなくてはいけません。
加えて、「誰かがやったのを参考事例に。」という後追いスタンスも、ここらへんでそろそろ考え直さないといけないフェーズになってきているのではないか、と思っています。なぜなら、そのスタンスが通用しなくなることが、状況的に、ますます明らかだからです。
人々の思考様式や行動ロジックが変化していて、なおかつ目の前にある機会選択の幅が増える中では、これまでと同じような方法で行動しているだけでは、冒頭に記したとおり「それを積極的に活用している人としていない人の差」が拡がる。それとまったく同じ仕組みで、採用活動をする企業の「積極的な行動をするか/しないか」の別によって、結果の差がどんどん拡がってしまう。
そういった状況下であればこそ、「誰かがやった事例が参考になる」とまず考えたくなりますが、そういった考え方は、結果的に、後追い・同調型のスタンスに繋がってしまいます。そしてこのスタンスは、今おかれている状況を考えてみたとき、次の2点で決定的にまずいと思います。
1. ソーシャル化の特徴である「リアルに自分たちがやってみないとどうにもならない」という前提に、いつまでも対応できなくなる
2. 流れが速い中では、対応が遅れるという原因だけで機会を取り逃し、追い付けなくなる傾向がますます顕著になる
ありがちな話ですが、特に2.を真剣に考えないと、つまるところの結果として⇒「どの会社も差別化がままならない=同じような情報提供パターンばかりが増える=学生に情報が届かない、発見してもらえない=結局は大企業が有利になる=有名企業でない限りお金と時間が無為にかさむ=最初に戻る……」というループから抜け出せなくなる可能性が、ことさらに大きくなるでしょう。
なぜなら、
1. 今の状況はネットワークの高度化がもたらしているものであり、
2. それがスマートフォンの所有率の劇的な向上でさらに加速すると想定され、
3. そのような状況でネットワークに外部性が働きだしたとき、そのスピードの速さには、きっと手がつけられなくなる
と予想されるからです。
そして、採用活動というシチュエーションを考えた時、大企業がその外部性を活かすのは(悔しいですが)簡単です。そうなると、大企業ではないほとんどの企業にとって、後手を踏むことが、これまで以上に致命的な結果に繋がるであろうと意識しなければならない。
ただ、これは同時に、どの企業にとっても(大企業ではなくとも)、外部性を味方につけることで大きな力を手に入れる可能性が、等しく与えられているということでもあります。それがもう一面での重要な真実です。だから、大企業がやらないこと(やれないこと)を、先手先手で打っていくことは、これまで以上のレバレッジを得て、成果を出す可能性があります。
今まさに動いている「ソーシャルWeb」の流れだったり、「スマートフォン優位」の流れだったりというのは、いずれも(相俟って)、情報接触の「行動様式の前提が変わる」ことですから、今ここが、新しいことへの挑戦のタイミングであり、現状抱える課題への解決に向かって一気にジャンプするチャンスであると捉えて、間違いはないはずです。
そんなわけで、「スマートフォンがメディアとしてメインの時代になる。」という事実について、やはりしっかり考えてみたいのです。
リクナビもマイナビも、いまから2013に向けて、PC版の全機能を盛り込んだスマートフォンアプリを企画しないと仕方がないでしょう。それに加えて、スマートフォンアプリならではのリーチをどう実現するかが、設計のポイントになるはず。それらのアクションを設計できているかということによって、クライアント企業は、いずれのナビサイトを選択するかの判断基準にできると思います。
また、その一方で、そのようなナビサイトに縛られずとも、自社独自の動きをどれだけ工夫できるかによって、独自の実を得ていく可能性が高くなるはずです。まずはそれらに積極的にならなければ。
最後に。
現実に施策に落とし込むことを考えると、いろいろ悩まなければいけませんが、今の時点でまず考えはじめたいと思うのは、次の基本的な2つのポイントからです。
つまり1.“今いる位置”(=場所)の概念の発生をどう取り込むか。そして2.“常時性”&“同時性”(=時間)の概念の広がりをどう取り込むか。場所と時間です。
この2つの概念の変化から派生することがたくさんあります。もちろんソーシャルの入り口ということもそのなかの一つ(大きい一つですが、ひとつに過ぎないという言い方もできる)だと思います。そして、若者のライフログの中に、自社への就活/転職をどう組み込んでいくか、そんなことを考え実現できればと思っています。
文責:人事・採用担当 浦野
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