リクナビ2012がFacebook(以下FB)のサービス(コネクションサーチ)と連携しました。就活生がFB内での活動にメリットを得られるようにすること、つまりFBで形成されるソーシャルグラフを就活に有利に反映させられるようにしよう、というものです。
この連携がリクナビユーザーの就活生や採用企業に何を引き起こす可能性があるのか、そんなことを少しずつ考察してみたいと思っています。
今回の提携によってリクナビを使う学生の中に次の4つの行動パターンが存在することになります。
(1)もともとFBユーザーで、リクナビと連携をする
(2)もともとFBユーザーだが、リクナビとの連携はしないでおく
(3)FBユーザーではなかったが、これを機にアカウントを作成しリクナビと連携する
(4)FBユーザーにはならないし、リクナビとの連携をするつもりもない
まずは(1)や(3)の「積極派」学生層が発生するということについて。
■なんとリクナビを使わない企業にメリットが生まれた
リクナビは値段が高いなどの理由で、マイナビなどをメイン利用する企業も多いと思います。今回、そんな企業にとっては、リクナビを使わずとも(1)(3)の就活生にアプローチする手段が与えられたことになります。(リクルートさんありがとう!)
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Facebookに自社のファンページを作成し(無料です!)、そのファンページについてのFB内広告を、少々の金額を使って、就活生をターゲットにして打つ。(FBでは、広告を打つ対象を属性からターゲットできる仕様になっています。)10月以降に増加するであろう「FBユーザーの就活生」は、その多くがリクナビからの流入でしょうから、リクナビを利用していない企業でも、リクナビ活用中の(1)(3)の就活生にFBの中でアプローチできることになります。しかもFBに支払う数万円のコストで。
リクナビからの流入とはいえ、FBのアカウントを作成し活用できるような層(おそらくは新しいものやWebへの感度が高め)を採用ターゲットとしたい企業(特にベンチャーやWeb系の企業に多いと思いますが)にとっては、上記のようなことを可能にするリクナビとFBの連携は、とっても有難いものとなりそうです。
(※そう考えると、“今回のリクルートのメリットって何?”という別の考察も出てきますが、それはそれで話が長くなるのでまた別途。。。)
■では多くの学生さん(就活生)はどう動くでしょうか
実際に学生さんの多くはどのように動くでしょうか。そんなに大量の学生さんがFBのアカウントを作るのだろうか?という疑問は残ります。
こちらの学生さん【下記リンク】がブログで書いている通り、普通に考えて、自分のソーシャルグラフの中に企業の採用担当者が突然入り込んでくる、ということは気持ち悪いことでしょうし、今の日本の大学生の多くの感覚として、居心地の悪いものだと思います。
そんな理由で上記(2)のケースは、特に意識的に連携を避ける層ということになるでしょう。
そして実際のところ、FBに連携しない場合の多くは(4)であって、意識的に避けるというよりは、良く分からないサービスにはそもそも食指が動かない(流行り始めたら周囲につられて始めるかも)ということだと思います。
ただ、そんな中、今後出てくるであろう(少数であることは間違いないのですが)次のような層も考えられます。
a)ソーシャルな場で自分の活動をアピールする術を現時点で持っている層
b)これを機会に“ソーシャルメディアの場での実名公開というメリット”に発想転換して突入していく層
c)mixiとFBを使い分けるような層。(FBは公式の場のSNSとして利用するような)
あのリクナビがFBと連携するということに象徴される現在の流れは、a)のような層がこれからますます存在感を発揮できるようなステージが整ってきていることでしょうし、b)も次世代をつくるイノベーターな感じがしてグッドです。また、c)のような、就活向けのイイ子な情報をFBで公開していくような“SNS使い分け”は、今後のソーシャルメディア時代の渡り方としてありだと思います。これはこれで戦略的で頼もしい。
このあたりが上記(1)や(3)の活動層でしょうか。いずれにしても、ベンチャーやWeb系の企業との親和性が高いように思われます。
■今後普及するためには
数が少ないからこそ差別化要因になるということも言えそうですが、積極的に活用できる学生さんが多くなってくることには、とても期待したいところです。
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しかしながら、結局のところ、学生さんにとって、上記a)b)c)のような行動が、何らかのインセンティブを発揮するものと実感できない限りは、およそ(4)に該当する学生が9割以上ではないかと思われます。
そして就活生が、実名で、ソーシャルの場で活動することにメリットを実感するようになるには、まだある程度の時間が必要でしょう。なぜなら、採用をする企業の側が、まだその発想に追い付いていないからです。
企業がまだマスアプローチのロジックで世の中を眺め、規定し、採用活動を行う限り、就活生にとっての効率的な時間の使い方もそちらに引っ張られることになると思います。
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思うに、FBとリクナビのサービスの連携が学生さんの間で受け入れられるとしても、最初は、感度の高い就活生同士の情報交換というメリットを見つけ出すことからスタートするのではないでしょうか。企業は何らメリット提供せずに蚊帳の外に当分いて、学生同士がメリットを感じてユーザー数を増やしていくというケースが、もっとも考えやすい。
そういった学生たちの行動によってある程度の素地が固まることで、大多数の企業にとってのメリット(スケーラビリティとか…orz)が発生し、ご相伴にあずかるという前後関係でしょう。
主導してくれるのは新しい世代、学生さんであると思われ、企業はそういう新しい世代をきちんと尊敬したほうがいいと思います。
■企業は何かを提供できるのか
普及するのであれば上記のような経緯ではないかと思われるので、それぞれの企業がどのようなスタンスでソーシャルな場に臨んでくるのかがますます重要になると思います。企業の側が学生さんたちの活動に“どんなメリットを提供できるか”をきちんと考えないといけない。
間違っても、「学生を監視する」とか「学生のTLを追って何かの判断をする」とか、そういう使い方は、gkbrすぎるし意味がないのでやめるべき。(学生さんがアピールしたい場合は受け取る/受け取らないの判断をすればいいでしょう)
「企業と学生」という関係性について、お互いにソーシャルメディア以前の産業革命的なメディア感覚をひきずってしまうと、大きな流れを取り逃すことになると思います。
それぞれの企業がSNS上などのソーシャルな場で、普段からどのような振る舞いをしているか。その積み重ねが、学生側にも赤裸々に伝わるようになります。企業側にとっては、ますます普段の基本的なスタンスに意識的なることと、その時間的な蓄積が必要になってくるでしょう。
また、FB自体もグループ機能を新たに強化するという発表があったとおり、個人情報の公開範囲に伴う参入障害を取り除こうとしています。そんな様々な動きが重なって、日本でも徐々にソーシャルメディアの就活への活用が広まってくるのではないかと思います。
企業にとっても就活生にとってもメリットのある環境を作り出すためには、古い人事担当者の世代的発想が露見した行動や多数意見によって、学生さんたち若い世代のポジティブな変化が直接間接に阻害されてしまうことだけは避けたいものです。
文責:人事・採用担当 浦野
Recruit21さん、ご質問ありがとうございます。確かに分かりづらい書き方になってます。反省。
おっしゃるとおりでFBとリクナビは「連動」していないだたの「連携」(提携?)にとどまっている、と私も理解しています。学生のリクナビ内のマイページに、コネクションサーチの結果が表示されるようになっているというものですが、実際にはFB内で完結しているものをリクナビは表示しているだけだと思います。
ご質問を生んでしまったのは、私の書き方(連携するという言葉の使い方)が悪いためと思います。特に(1)~(4)の書き方のところ。シンプルな書き方にしようとして逆に紛らわ
しいという…失礼しました。以下、少し詳記します。
リクナビユーザーの学生がFBを「連携する」という言葉を、今回私が「FBのアカントをつくる」&「そのうえで、リクナビで得た情報をもとに、FBを就活に利用するようになる」という一連の動作をイメージして使ってまして、これが「サービス同士が連携する」という、通常想定する「連携」と紛らわしい・・・orz
なので、連携する、ではなくて「コネクションサーチを使う/FBを就活に使う」の方がこの場の言葉づかいではシンプルで正しいかもしれないです。
たとえば、上記(1)のような学生さんがリクナビで見つけた企業を自らコネクションサーチにかけて検索する、というような使い方をするのが、就活で両者を「連携する」イメージです。また(1)(3)のような学生さんは、就活生であることをこれまでFB内で(データ登録として)明らかにしていなかったとしても、コネクションサーチを利用するうえでは明らかにして積極的に活動することになりますので、改めて、企業からは広告の対象になることも考えられるかなと思います。いずれにしても、リクナビでの活動をもとに、FBに活動を展開・延用していくイメージが、今回の、学生さんが「連携する」の意でございました。
(あくまで、データを「連動」し、活動を「連携」するのは学生さんの自力というのが前提)
普通に考えれば、リクナビとFBが「連携しました」といえば、リクナビ内で起こしたアクションはコネクションサーチに反映させることだろうと想起されますよね。それがないのそもそもなところかと思いますが実際にそれがされていないっていう・・・。
ご質問に感謝いたします。お手数かけてしまいました。
投稿情報: ITmedia人事・採用担当 | 2010/10/19 21:26
純粋に質問なのですが、リクナビとFacebookの「連携」ってどの機能のことをおっしゃっていますか?
リクナビの実際の画面を拝見しましたが、
Facebookの紹介、リンクが設置してあるだけでした。
実際リクナビに登録していなくてもFacebookのコネクションサーチは利用できますし、
リクナビの方で志望企業を登録したからと言ってそれはコネクションサーチの志望企業欄とは同期されません。
FBログイン時のみに情報が表示されるウィジェットは設置してありますが、これはFacebookにログインしていれば「リクナビと連携」しなくても表示されるものだと思っていました。
(違っていたらすみません。)
ですのでリリースでは「連携」と銘打って入るものの
機能面での「連動」はしていないんだなと考えておりましたが、
この認識は間違っているのでしょうか?
投稿情報: Recruit21 | 2010/10/19 17:53
私の記事を引用して頂きありがとうございます.
記事の内容にも概ね同意です.
特に「結局のところ、学生さんにとって、上記a)b)c)のような行動が、何らかのインセンティブを発揮するものと実感できない限りは、およそ(4)に該当する学生が9割以上ではないかと思われます」という箇所はまさにその通りだと思います.
(多くの)企業の人事担当者の方々が学生のweb上での情報を適切に取り扱えるだけのリテラシーを身につけてくださるまでは,学生にとってweb上での実名でのPRはリスクが大きい気がします.
投稿情報: ayataka441 | 2010/10/18 11:42