当社運営メディアの「BusinessMedia誠」に、就活都市伝説の検証記事がありました。
今回はその記事への個人的追随なので、できればこれ↓も、ご覧ください。
※記事で検証されている都市伝説
今回は、ひとりの現場人事(採用担当)の目で、この都市伝説を再検証してみたいと思います。ちゃんと本音で書いているつもりなので、学生の皆さんどうぞご覧ください。
■都市伝説を再検証する
1.顔で採用あり・なし
あるでしょう。ただ、この記事に書いてある内容はまだキレイめで、本音ベースで言えば、「業種・業態により、顔採用がある」というのが答えではないでしょうか。自社の製品やサービスに、特段の差別化要因もソリューション提供余地もないようなビジネスの場合、何が営業の差別化要因になるかと言えば、売る人間くらいしかない。
であれば、何によって買う側の意志決定のモチベート高められるのか?というときに、「美人・イケメンが有利だ」と発想する企業はあると思います。(そして、買う側=企業の購買担当は男性・おっさんの事が多いので、イケメンより美人のほうが採用ニーズが高い。)
さらに加えて言うと、そのような差別化困難なビジネスに、有能な人材がコミットするとは考えづらいですから、能力よりも顔で採る、という本当の意味での「顔採用」が発生すると思います。
そして、これは戦略的にも筋の通っていることなので、なんら批判も卑下もする必要はないと思います。
ただ、内定者が美人ばっかりだ、となったときに、それを内定者自身が無邪気に喜んでいいものかどうか。先に述べた理由(商品自体に差別化要因がない)を気にしてみる感覚は必要かなと思います。
もうひとつの清潔感については、もちろんあったほうがいいですが、世の中を眺めてみるに、「清潔感がないから優秀じゃない」かって言うと、そこの相関関係は個人的に見つけられないように思います。なので、当社の場合はあまり気にしません。極度な場合は厳しいですが、あとから直せる類のものだと思えれば、後天的に何とでもなる表面上の事はあまり気にせず、もうちょっと違うところを見る努力をしたいなと。
とはいえ一般的には、重要なポイントとして気にされることが多いと思います。チーム仕事や顧客への印象というものが重要ですし、こういう部分で対人能力を見ている企業も多いかなと思います。
2.面接の待ち合い場所で社員が審査することがある
これ、ウソって言っていいんでしょうかね……。東証一部の某企業の採用担当者が、Twitter上で「待合の様子は見られているから気をつけよう」と堂々とツイートしているのを見たことがあります。そしてそれに私が個人的にリアクションしてみたら(っていうか、“くだらない”って噛みついてみたら)、普通の企業ならしているでしょう、だから学生に注意を促しているんです、との返答でした。
ということで、チェックをする対象にはなっているケースは多々あるんじゃないかと。確かに、お堅いところはそういう判断基準があってもいいのかもしれないなと思います。営業先での態度を類推させるものと考えれば、そういう基準もアリかなと。(個人的には好きじゃないですが。)
3.セミナーや説明会のドタキャンは採用に響く
おそらく2.をやっている企業であれば3.はある気がしますし、その逆もまた然りな気がします。ただ、ドタキャンばっかりくらっている企業もかなりあるはずなので(前回ブログの「セフレ」状態)、そんなのチェックしてたら持たない、というケースもあるように思います。
いずれにしても、学生の皆さんが、どうしてもドタキャンせざるをえない場合には、(これは遅刻の場合も同様ですが)事前の連絡や、後日のお詫び・お礼など、ビジネスの場にいるひとりの大人として、普通にしておくのが良いと思います。
合否に関係ないとしても、そういうのはコミュニケーションとして普通にできるようになっていると、得することが多いです。
4.学歴フィルターは存在する
確実にあるでしょう。
それぞれの企業が、「求める人物像」をもっているわけで、そのためのフィルターとしての「学歴」は、まだまだ効力があるんだと思います。何をフィルターにするのかというのはその企業の戦略や風土そのものであって、学歴フィルターをかけるタイプの企業で生きていきたい場合は、学歴を身につけるしかないと思います。それが何かの良し悪しを意味するわけでもありません。
当社の場合は、学歴をフィルターしても意味なく、その代わりに「ソーシャルメディア・リテラシー」をフィルターにしていて、だからリクナビは使わない、という戦略/戦術を組み立てています。このように、何をフィルターにするかは、企業それぞれの戦略/戦術ですから、その意味で、学歴フィルターだから悪いということではないと考えます。(でも個人的には「古い」フィルターだと思います。)
学歴フィルターに反感を持たれてしかるべき状況があるとすれば、いかにも「当社は学歴フィルターありません」みたいな澄ました顔して、裏側でシステムをいじっていたりするケースだと思いますので、学歴フィルターかけている会社は堂々と言えばいいと思うのですが。
5.スピード写真など、顔写真をケチると採用に響く
記事に書いてあるとおりかな、と思いますが、本人と実際に何回も会った最終選考の後で写真を見比べて合否が決まるというのは、ちょっと考えづらいですね。もっと初期の選考段階の話じゃないかと。
書類作成くらいの単純作業に、その人の仕事(アウトプット)のクオリティが反映されるケースは多いと思います。そこでまずは差が付いているという初期判断をされるケースはあると思います。
その意味では、(写真からは趣旨外れますが、)履歴書はそろそろ手書きではなく、PCで作成しても良い気がします。今のビジネスの現場では手書きの文章作成ってあまりないでしょうから、PCを使ってどの程度のクオリティを出せるかというのが、前面に出てもいいはずじゃないかと。ただ、「証明書類」としての効力は自筆じゃないと保てないという意見で自筆のみ可としている企業もあるかも。
最近の写真館の腕というかフォトショップの機能には、目を見張るものがありますが、あきらかに別人レベルっていう(←実際ある)修正は、これも「本人を証明する書類」としての効力として疑問符がつくので、ほどほどに、というところでしょう。
さらにいうと写真うつりで何とかしようという感性が、ちょっとどうかなと思う。
でもこれって1.とも関係していて、まず「顔フィルター」があると思っちゃうからなのか。
6.体育会系学生は有利
記事に書いてある通りですね。これも顔採用や学歴フィルターと同様、業種・業態と求める人物像の兼ね合いだと思います。
体育会系の学生さんには「根性や継続力がある」「規律を守れる」「協調性に富む」というような評価タグが付くことが“就活業界内”では多いです。人によるような気がしますが・・・。しかし、今の若者に相対的に草食系が多いという印象をもっている企業からは、アプローチ先として体育会系が脚光を浴びているようです。
7.面接で親切な対応は不採用の暗示
これ、あると思います。面接担当になりたての頃、そうするように(某R社の)先輩から教えられました(笑。
しかしこれも記事に書いてある通りで、不親切だから採用という確約でもないし、親切だから不採用という確定でもないので、あんまり気にしないのがいいでしょう。
就活を進めていると、「あんなに和気あいあいとした面接で、良く喋れたのに、なぜ不採用なのだ?」という経験をするかもしれません。そのときは、このパターンに当てはまっている可能性があるかも。
「圧迫面接」については、最近とみに減ってきていると思います。それよりも、最近いろいろな話で聞くところでは、「深掘り面接」を、圧迫だと感じるケースが増えている模様。人によって「引き出してくれた」と感じる場合と、「意地悪に突っこまれた」と感じる場合が分かれる、と。深掘りしないと面接結果出せないのですが。
圧迫=悪の所業という等号が成り立つとすれば、それは、「企業のほうが立場が上だ」、という誤った認識のもとで行われるケースだと思いますが、まだまだそういうのが残っているせいで、深掘り面接もすべてひとくくりにされてしまう、というのが現実でしょうか。
8.グループディスカッションでは司会をすべき
記事のとおりですし、逆にこれってまだ信じている人います?
9.OB訪問は採用につながる・つながらない
記事のとおり。
2012からはコネクション・サーチの利用が広がっていくといいかなーと思います。企業によっては、若手社員にFacebookアカウントを持ってもらって、サーチにかかるようにしておくという対応も出てくるかと思います。
また、当社の2011内定者に聞いた話によると、その彼は、就活を始めるのが遅かったために情報収集がままならず、克服方法としてmixiで志望する会社在籍のひとをサーチしまくり、訪問のお願いを出しまくったそうです。そして、数々の大企業・人気企業の社員さんでも、積極的かつきちんとした態度で接すれば、結構な割合で実際に会ってくれたそうです。素晴らしいですよねー。ネットワークリテラシー!
こういう積極性と発想力・行動力、そして会った時のきちんとした対応が備わっていれば、就活始める時期が遅かったとか、そういうのはまったくハンデにならないということを、彼は証明していると思います。実際複数内定もっていましたし。
10.内定前に身元調査がある
記事のとおり、一部で身元調査はあるといわれています。そういった調査をする業者が存在しているということなので、やはり発注者がいるっていうことでしょう。でも当然、表に出てこない話でしょうから、すみません、これは憶測でしかないです。
そして、twitterやSNSの発言が採用に影響する/しないの話がこの記事にもありますが、この話題、最近ちょくちょく出てきますね。そしてこの話題が出てくるたびに違和感を感じるのですが、それはまったく異なる次元の話が混在している事がとても多いからです。
およそそれらの話題が出てくるときって、
(a)「発言のレベルやクオリティを見られる」
(b)「二枚舌の発言がばれる」
(c)「反社会的行為や犯罪が見つかる」
という類のものがひとくくりで語られてしまう。
これらはまったく別のカテゴリの話で、切り離して考えられるべきものでしょう。特に(c)はTwitterとかSNSとかいう以前の問題のはず。(a)や(b)に混じって、そういった行為がばれないように「SNSの使い方に気をつけましょう」という結論に括られている記事が散見されますが、まったくの筋違いもいいところです。
反社会的な行為をしている人であれば、それが判明したのがTwitterであろうと何であろうと、会社は採用することが困難です。それはTwitterの発言を企業が見るとか見ないとか、ソーシャルメディアの使い方を気をつけようとかいうカテゴリの問題ではありません。反社会的な行為や犯罪は、しちゃダメです。
それらを切り離して考えてみると、(a)「発言のレベルやクオリティ」という点については、気にする企業はあるかもしれません。ただ、SNS上での発言のクオリティが本当に評価基準として適切なのかはかなり怪しいですし、それを判断基準にしようという企業で生きていきたいか?ということについて、就活生側の判断はあるべきだと思います。
こういうケースは、情報コントロールの概念が強くて古い(柔軟性を排除する)企業である可能性が高く、これからのキャリアを考えた際、ただ情報の受発信を一律にコントロールするという発想・環境で育つことは、時代にそぐわなくなる可能性が大きいでしょう。
また、(b)「二枚舌の発言」(ホントは第一志望じゃないよ発言など)の類については、Twitterチェックする以前の採用側のスタンスの問題で、第一志望じゃないことが分かったから評価を下げるというのでは、採用担当者の仕事って何ですかい??っていう突っこみ以外、言葉がありません。もしくは減点材料を見つけ出すことがお手柄のお仕事とは、ご苦労なことです。「そんな時間があったら、第一志望にするための努力をしろよ、Twitterチェックする前に。」って言いたい。
さらにいうと、志望度合いの高低と評価の高低というのは、まったく別物だと思うんです…。
いずれにしても、a)ないしb)の意図でチェックする企業が存在することを前提に、自分自身のスタンスと照らし合わせていただくというのがいいでしょう。
■「顔」信仰。美人事という手詰まり
さて、最後に1.に関連して。「美人」であることが価値であるのか、そして価値であるとすればどういう場合か、と考える際に、最近どうも気になることがありまして、それが今回のタイトルにもした「美人事」という風潮なのです。
就活生側ではなく、企業側が自分たちの「顔」を気にし始めた。なぜ、「美人」であることを押し出す必要があるのでしょう。
私の説では、1.のところで書いたのと同様で、その企業のコアバリューが、他社と比べて差別化できない類の事業であり、就活生の皆さんがチョイスするべき特段の理由がその企業にない場合、であれば人事が美人であることを差別化要因にするしかないかも。そのほかにアピールできるものがない、と。だから、「美人事」って、かなりの手詰まり状態のはずで、それを良いことのように扱う今の風潮が、よくわからないのです。
事業や戦略、ビジョンや実績、組織と人に対する考え方etc.できちんと差別化できる企業の人事が、たまたま美人なケースはあるかもしれません。もしくは才色兼備なかたを雇用できるだけの立派な企業なのかもしれません。でも、その場合でも、よりによって、「美人」というところを押し出しポイントにチョイスして、自分から「美人事」言っているいるあたりが、なんでそういうマス広告的な発想になっちゃうのかなぁ、と。本質的な情報発信力では差別化できない感と、マス広告ロジックへの無反省さが透けて見えて、どうにもこうにもなのです。
ナビサイト中心の採用戦略では、実際に手詰まりになりやすく、そういう中から出てきた風潮だと思うのですが。個人的には、「美人事」じゃなく「美人事(笑)」というワーディングのほうがしっくりきます。
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以上、個人的な再検証なので、異なる見解をもつ採用担当者や企業はあるかもしれません。でも全体的に一般論を踏まえて再検証したつもりです。この点については、ぜひいろいろな企業からのご意見を聞きたいところ。
文責:人事・採用担当 浦野
たいしたこと書いてないのに、無駄に長すぎ。。
これで全文に目を通してもらえると思ってるのか。
結論と理由だけポンポンポンと述べてけ
投稿情報: D | 2010/12/10 14:46