最近、ありがたいことに「ソーシャルリクルーティングの先行事例としてのアイティメディア」、というような評価をいただき、たくさん取材もしていただいてます。それは大変うれしく思っていますが、実際のところ、今のわたしたちはFacebookやTwitterを使いまくるかといえば、案外そうでもないのです。
だって、イヤじゃないですか。「新しいツールを使うことが正しい」みたいな、最近の感じ。
本来あるべきは、今の新卒採用のあり方をもう一度考え直すとか、本当のソーシャルを追求したいとか。それはツール論なんかじゃない。
Facebookページのデザインとか、いいねの数を気にする前に、もっと根本的なことを気にしたい。採用プロセス全体に矛盾なくにじみ出る変革のポリシーとか。そんなことを体現できる採用活動になっていけば良いなと思っています。
なので、「あれ~、アイティメディアのFacebookページって、いろいろ言う割には気合いが入っていないんですね」と感じてもらったら「そうでしょう!ソーシャルって、そういうほうがカッコいいと思うんですよ、もはや」。ってキメたいと思います(笑
ちなみに、ツールということで言えば、今後につながる実験としてより大きいと思って行ったのは、採用HPを、スマートフォン前提に組み立てたということです。
とはいえ、大げさなことではなく、PCのWeb用に作る採用HPのデザインを工夫し、スマートフォンで見やすくしたというもの。
スマホ対応を考える際、普通の会社にとってWebアプリやネイティブアプリまで準備することはなかなか困難です。でも、わざわざそんなことまでしなくても、スマホとPCのハイブリッド対応にする「気軽な工夫」もいろいろあるはずで、ひとつの考え方の提示になればなと思っています。
これまでも、フルflashの採用HPとかは、見る学生側のめんどくささを無視した採用担当者の自己満足なのでやめたほうがいい、と考えていましたが、今回特に考えたのは
1.そもそもPCでの閲覧を最優先にしていいのか!?スマホからの閲覧を第一優先にしていいタイミングのはず。
2.スマホ対応の専用サイトやWebアプリをおいそれとつくれる予算潤沢な企業は多くない。だから担当者が考えて、少し工夫する。
「ほんとのソーシャルってツールでは実現されない」。「PCよりスマホ」。そんな感じのことを考えています。
■2013新卒では、5名内定のために一次面接40名のみ
もしも最も優れた採用とはどのようなものか?と問われたら、「10名採用する」のであれば、「10名を母集団として形成」し、その10名がまさしくぴったりの人材で、「その10名を内定して辞退なし」、入社後の離職も(少なくとも数年は)なく、活躍できている状態だ、と答えます。
ここに至る道筋を研ぎ澄ませることにしか、“ 採用担当者としてのプロフェッショナリズムはない ”。やや大げさに言い切りをするなら、そう言いたいと思っています。
でも、広報的な視点はどうなのよ?(=多くの人に自社を知ってもらうという効果も人事が考える要素ではないの?)、という意見もあるかと思います。忘れないように加えておくと、その母集団となった10名の向こう側には、自社の採用プロセスに好感を持ってくれている人たちが多くいるというのは「条件」だと思います。なくてはならない条件。それが「目的」ではない。
マスアプローチな「規模の大きさ」は決してテーマにはならないし、してはいけない。ソーシャルの結果として大きいに越したことはないのだけれど、、、核となるのは、「自分は選考を受けない」と判断をした場合でも好感・納得感をもってもらえるような状況をつくれるかという、それ自体。
なぜなら、「母集団を効率よく・多く集めること」と考えてる人は、とどのつまりは選考のどこかのプロセスで、その規模感のために、一人一人とのエンゲージメントを軽視せざるを得ない状況になっていると思うからです。
最初にSPIや学歴でフィルターかけるとか。意味ないESを課しているとか。一次面接を効率よくまわそうとか。そういうことになっていないか。
いくら口で「ソーシャルだ」とうまいこと言っていても、それらの結果がエンゲージメント軽視になっていないか。敏感にならないといけない。広報効果を狙った規模の追求が、広報的な失敗を招くというのはアイロニー以外のなにものでもない。
広報効果を考えるのであればこそ、人数規模を多くすることが最初のテーマであるべきか、よくよく考えるセンスが必要だと思います。
■2013新卒採用での実験。「ソーシャル・リクルーティング」以降。
さて、先述したとおり、弊社の2013新卒では、表だって「ソーシャル(ツール)」をばんばん使う、ということはしませんでした。意図的にかなり抑えていました。
ここ数年で、「ソーシャルリクルーティング」がいろいろな人たちに認知され始めたことによって、ちょっと間違った方向に展開し始めたと思っています。企業側も就活生側も、本質的な議論を経ないまま、「企業が情報を発信」して「就活生が情報を受け取る」という既存のナビサイト構図を、そのままFacebookで展開している。
「いいね」が多ければ良いとか。倫理憲章改定の影響による空白の2ヶ月間のつなぎとか。そういうことで行っていると、かえってソーシャルメディアの特性上、これまでのメディアにはなかった余計にめんどくさいデメリット(企業が学生のコミュニティに入りこむという状況が生み出すアレコレ)すら具現化されてしまう懸念も増え、あまり良い場所になっていないと感じているのです。
これからは、ソーシャルメディアを使うから「ソーシャル」なのではなく、リアル(フィジカル&バーチャル)とのつながりを大切に醸成し、個別のつながりを深める、言葉通りの「ソーシャル」がますます意識されることになると思います。
個別のつながりの重視ですから、そのときのポイントは、「母集団を集める」という発想をまず捨てられるか、、、ということにあると考えます。
■母集団を集めなくても採用はできる
「ソーシャル」と言いながら、結局は「母集団を集めて→→ふるいにかける」という現状の発想からは、そろそろ抜け出したいものです。個々への尊重が失われるところに「ソーシャル」が求める本当の共感は、うまれない。自分のことを「その他大勢の構成員」と扱う人に共感できるのか、本当に仲良くなれるのか。共感が生まれなければ、それが信頼関係として継続しなければ、ソーシャルな場ではほぼ何も生まれないはずです。表面的ないいねの数が増えていても仕方がない。
そもそも、母集団志向ならば、ソーシャルメディアに出ていく価値などないはずです。なぜならナビサイトに比べて利用者数が圧倒的に少ないから。ですが、採用担当者は、それでも「母集団を集めないと良い人材に出会えない」という思考に呪縛されたままでいる。そこに、ぎこちなさが出てきてしまう。母集団などという発想は、人材最大手の某社による催眠術と勝手に割り切って、マスメディア的な成功法則からは、そろそろ脱したい。
ナビサイト的なマス・ロジックの本質は、まず数値を増やし、確率論で絞り込んでいくことにあります。その結果として何が起きているのかと言えば、DMの開封率が1%にも満たないとか、説明会の出席率が5割を切るとか、内定辞退が続出するとか、そういうこと。その数値を改善するために行うことといえば、ますますナビサイト業者にお金を払い続けるいうことでもあります。(お金を払って検索上位に表示させるとか、プレミアDM打つとかw)
中身ある数を積み重ねていくということは、極端に言えば、その積み重ねが10人に至ったとき、その10人はそのまま採用して問題ないという姿に至るということではないかと思います。
2013のアイティメディアはその回答を「ソーシャル」に求めようとしていて、ソーシャルの施策をさらに切り替えたということになります。今年で言えば、40人の「いいね」が5名の内定者につながるというように。
「ソーシャルリクルーティングは既存の採用活動に対するアンチテーゼたりうる。」---わたしたちアイティメディアの採用チームがそう考え、対外的に証明をする際、その価値のありかを、「マスに対してお金を使わない=お金を使わなくても成功できる」ところに少しこだわって、象徴的に示してきました。が、今は完全に「母集団の少なさ」が価値のありかだと考えています。
(最終成果はもちろん、自社にマッチした人材に内定を受諾してもらうことです。)
Facebook上で「友人の数が多い」とかTwitter上で「フォロワーが多い」という時に、大切なのは数値ではなくその中身であることや、オンラインでの絆が、リアルな絆につながるものであるか?ということは、ソーシャルメディアを少しでも使ったことがある人なら、普通に理解していることのはずです。
■積み重ねと軌道修正の連続、その先に。
上記のような考えは、すぐにできるものではないと思います。アイティメディアの場合は、ここ数年間の、ソーシャル上での活動の蓄積の上に成り立ったものだと考えています。だからもっと継続する必要がある。継続的な活動として目指すものだと考えて取り組んだほうが、成果の反復性は高いと思います。
もちろん、すべてが前例のないところでの仮説と検証の繰り返しなので、今年の当社のやり方が正しかったか、何か落とし穴がなかったかということは、毎年毎年、常に気にしています。実際に経験しながらじゃないと、そのあたりの軌道修正はできないし、次の展開は見えてこない。だから自分たちの手で実際にすべて行うし、積み重ねから学ぶ。ひとつ考え続けるのは「母集団を増やさない」ことの妥当さであり、今感じるのは、それが「ソーシャル」の継続の中で実現されるものではないか、ということです。
くれぐれも「倫理憲章の影響。リクナビがオープンするまでの期間にfacebookを使うのが便利。」なんていう発想になりませんよう。
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最後にお礼を言わせてください。
弊社の採用活動に興味を持っていただいたすべての学生のみなさんに感謝申し上げます。とりわけ、エントリーし、選考を受けていただいたみなさん。みなさんがいなければ、企業の採用活動は成立しません。企業の新卒採用活動を完成させてくれるのは、学生のみなさんです。
採用担当者はいつも不安です。みなさんに助けられることのほうが全然多い。だから、「アイティメディアの採用に自分も申し込んだ!関わった!」ということが、みなさんにとっての良い体験となるよう、これからも頑張っていきます。
そして「新卒」のタイミングだけが、唯一のつながりではないとも思います。
いつどこで、次のきっかけがあるかわかりません!今後も引き続きいろいろなフィードバックをください。つながり続けましょう。よろしくお願いします。
(文責:人事・採用担当 浦野)
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