10月20日の午後10時から、テレビ東京さんが新卒採用の会社説明会をUstreamでライブ配信しました。
アーカイブは残念ながら公開しない模様(リンク)ですが、ソーシャルタイムラインはそのまま残っているので、盛り上がっている雰囲気は感じ取れます。
そのライブ配信を見ながら私は次のようなことを考えていました。
■“テレビ局だからやっていい方法論”
実際にライブで見て、率直に感じたのは「テレビ局だからやっていいもの(できること)」だなあ!ということでした。
構成はテレビ番組そのもので、そこに同社のノウハウがきちんと活かされている。
だからテレビ局以外の企業が真似てしまうとただのおままごとになる可能性が大きいものであったのも事実で、あれに感化されて自社のUST説明会コンテンツを考え始めるのは、ちょっと危険だろうというのが現時点での感想です。
というのも、ソーシャルメディアを採用活動に利用するごく普通の担当者の立場から見てみれば、今回のテレビ東京さんのUstream利用は目的が少し曖昧であったのか、そもそも同社の説明会自体の位置づけの問題なのか、もしくは同社の事業としての“Webへの取り組みの発想は現状こうですよ”ということがそのまま出ていたのか、
…と、そんな興味が残るものでもあり、(感度の高い学生さんの中には、同じような感想をもった方もいたかもしれません。そしてこの辺りは今回の趣旨ではないので詳細は省きますが、)とはいえそれでも2000名近くの集客を普通に実現し、30分のコンテンツでオーディエンスを惹きつけきるパワーは、同社のポジションおよび映像コンテンツのノウハウあればこそ実現できる、さすがのものでした。
そのようなところを考えてみるに、同様の背景やノウハウを持たない企業がやったとしても、その曖昧な部分だけがクローズアップされてしまう可能性が大きいと思います。
また、“学生さんが求めているのはああいうもなのだ”と簡単に捉えないほうが良いと思いました。
■アイティメディア的「普通の会社がUstreamでがんばる方法」
では、特別な背景やノウハウがあるわけではない普通の企業が、Ustreamを説明会に普通に活かしていくために必要なことは何でしょうか?
当社は2011年度の新卒採用でUstreamの説明会を数回(社員訪問の中継なども)行うなかで、就活生の皆さんから一定の評価をいただくことができました。
さらにはその参加者の中から複数の内定者を出すこともでき、一定の成果にも結び付けられたと考えています。
その設計プロセスの中で考えていたこと、そしてやってみて今感じていることを、まとめてみたいと思います。(いろいろなご意見いただけると嬉しいです)
<その1. 目的を明確にする>
何事もそうだと思いますので、今さら釈迦に説法なのですが、「目的」=「何を解決するのか」をどれだけ明確に意識し、定義できるかというのが、ほとんどアウトプットのデキを決めてしまいます。特にソーシャルな場ではそれが顕著に(ダダ漏れに)なると思います。
たとえば、USTREAMで会社説明会をする目的として考えられるのは、次のようなものです。
・地方や海外など遠隔地の学生さんへのアプローチ
・説明会キャパシティ問題の解決
・Web親和性の高い新規学生層とのコミュニケーション量の増加
・自社採用(の先進性)についての広報、宣伝
ただこれも少し不十分な感じがします。たとえば、遠隔地の学生さんにアプローチすることによって、何を意図するのか。
手付かずの層の掘り起こしを意図するのか、それとも実はそのほかの学生さんからの好感度を増すことを意図するのか、純粋に利便性を提供するべきと考えるのか。などなど・・・いろいろ具体化の方向性があります。
そしてこの目的が十分具体的に練られていれば、細かい策も自然と方向性が決まってくるので、一貫性を持った判断が、その後ラクに行えると思います。
都度都度で一貫性のない判断をしているような場合、手段の目的化が起こっている可能性があり、なによりコンテンツがぶれぶれで見ていて何の説得感もなくなってしまうでしょう。失敗ケースで一番多いのはこういったケースと思います。特に「Ustreamを使うこと」が目的になってしまっているようなケースは危険だと思います。
<その2. コンテンツにWebならではの工夫する>
伝えるべきコンテンツの中身が薄くては最初から話にならないのは大前提なのですが、通常の説明会であれば良いコンテンツ・良い見せ方であっても、Ustreamに乗ったがためにあまり良くないコンテンツになることを避けなければなりません。
当社の実感は、「通常の構成を行った説明会を、そのままUstreamで中継しても、効果が下がる。」です。
良い説明会コンテンツをどう活かすか、そのためにUstreamならではの工夫を考える必要があると思っています。
そしてその答えは、「良い説明会」の制作ロジックを片手に持ちながら、「良いWeb動画コンテンツ」の制作ロジックをあてはめてみるところにあるのでは、と仮説立てています。
説明会会場で参加しているのと、Web(PCの画面)を通じて参加しているのとでは、参加する学生側の状況が全然違います。
Ustreamでは、学生さんがPCの前にいてWebに触れているシチュエーションですから、提供されるコンテンツが「Webの動画コンテンツとして興味深いか」そして「Web動画コンテンツの成功ロジックに則っているか」が重要と考えています。
例えば、
当社の2011説明会では次のようなことでそれら工夫を具体化してみました。
1.リアル会場でも学生さん50名くらいが参加。会場からのツイートもあり。=Ust視聴者と会場参加者がTL上で絡むことで距離一体感を出す
2.当社からの説明パートは、内容ごとに10分以内で1コーナーにまとめる =コンパクトなコンテンツ
3.その1コーナー終了ごとに質問交流・会話の時間を設定する(10~15分くらい) =主体的アクションを増やす
ツイッター経由の質問もここで積極的に取り上げ、リアル会場の質問とクロスオーバーさせる =一体感
4.それらまとめてコーナーのコンパクトなまとめを最後に必ず入れる =今北産業w
5.ツイッターからの質問は、説明パートの最中でもどんどん回答を入れていく(ツイッター回答担当者を配置)=双方向、リアルタイム
この“10分1コーナー&質問交流”を5~6コーナーくらい繰り返していけば、合計で2時間になる説明会であってもこちらの伝えたいことを十分伝えつつ、会場もUstも一体となった説明会の場づくりができ、結果として説明会自体の離脱率も相当低く抑えられました。
(実際に当社の場合は、離脱がほぼゼロという状況でした)
■普通が大切
上記でお伝えしたことは何か特別なテクニックではないと思います。テレビ局でなくてもできます。普通の会社が、普通に工夫をし、きちんと盛り上がり所定の成果を達成するUstream説明会を作り上げていく姿を想像すると、上記その1.とその2.について「自社ならどうするべきか」というところから始めることで、糸口がいろいろ見えてくるのではないかなと思われ、強くお薦めします。
■そしてコンテンツ以外のあれこれ(運営準備とか)
きちんとした中身のある(←繰り返しますがこれが一番大切!)説明会を、Ustream上で成功させるために、コンテンツの工夫以外にも細かい準備や工夫が必要になります。
これらは、枝葉の話になってきますので、今回はいったんここまでとし、別途どこかでまとめたいと思います。
↓こんなこと↓
その3. 当日の場の設定に工夫する (→こちらで書きました)
その4. 遊び心は必ず(こんなふうに)入れてみる
その5. 設備・運営体制を整える
その6. 想定しうるリスクと対策
その7.やってみて初めて学べること、実感できること
文責:人事・採用担当 浦野
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