いくつかの会社から立て続けに「Facebook採用枠」を設けて2012新卒採用を行う、と発表がありました。
もちろん、発表こそしないけれども、そういった試みをしようとしている企業は他にもあると思います。
Facebookで採用をする、ということが日経新聞なり毎日新聞なりの記事としてバリューを持つ、っていうところが今この時期という感じ(!)ですが、各企業が「当社もFacebook採用枠をつくるべき?」と検討する際に、考えるべきことがあるように思いましたので、今回のテーマにします。
■採用「枠」を設ける?
当社もtwitter、Facebookともに使っていきたいと考えて昨年から活動しているのですが、今回も採用「枠」は設けないつもりでいます。
まず、採用「枠」を設けること自体は、良いことだと思います。
単純に考えて、強制的にでも採用する人材像にバリエーションをつくるためには良い方法に違いありません。
これからの時代に活躍できる人材のバリエーションって、僕らが考えているよりもきっと圧倒的に多種多様でしょう。
そう思って手法を新しくしても、過去の判断基準に引きずられた選考判断をしてしまっては元も子もない。
求める人材像を新しくする、もしくはバリエーションをつける、と言いながら終わってみたら役員の意見を取りまとめすぎて、これまでと同じ人材ばかり採用していた、というケースに悩む採用担当者の姿って容易に想像できるのですが、そういうのを避けるための工夫になると思います。
もちろん、「枠がある」ことによって、そういった求める人材層へのアナウンス効果も高まりますので、出会い(マッチング)の機会増大に寄与してくれると思います。
私が個人的にFacebook採用「枠」を設ける理由として賛同できるのは上記の理由からです。
逆にいうと上記以外の点ではメリットが見つけづらいです。
ちなみに当社が「枠」を設けない理由は、
・全体の採用人数がそんなたいそうな数ではないから
・そもそもナビサイトを使わないから
ということで、いわば全員「ソーシャルメディア枠」なので、わざわざ作るまでもないということにありますが、
そうでないとしても、ソーシャルメディアにおけるリテラシに注目して採用活動を行うという場合に、Facebookだけに採用枠を作ることの意味合いも、いまいち掴めていないところもあって、もっと他に作らなければならない「枠」があるんじゃないかという気持ちもあります。なんでわざわざFacebook「だけ」枠があるんだろう、と。
(例えばブログ採用枠なんてほうがFacebookよりも普通にあっていいはずだと思うのですが、なぜか聞かないですね。USTREAM採用枠だってこれからの人材という意味では必要な気がする)
■個人的に考えるあれこれ
Facebook採用「枠」を特に設けることには、建て付けを考える企業側に話題性を意識しすぎるきらいがあるのかも、というのは穿った見方でしょうか。採用するべき人材を考える際に、そのほかの指標で測るべき重要な視点もあるはずですが、それはともかくFacebookだけにフォーカスをあているあたりで、Facebookに求めたいのは、話題性なのか、ターゲットとなる人材なのか。
話題性が先行する戦略の何が良くないかといえば、結局Facebook枠で遡及したかった本来の層とはターゲットがずれてきてしまう可能性が大きいということです。話題につられてエントリーする層にアプローチしたくはないはず。話題性とは「数にコミットする」ことを目的にした、旧来からのマスアプローチの発想に根ざしている気がして(昔ながらの広告代理店風味な)、そこには注意したいな、という。
■結局Facebookを何に使うのか?
そこで、(話題に引きずられる層とは異なる)本来求めたいリテラシー層をターゲットするために、「フレンドが一定数以上いる場合に限る」などの条件設定が出てくるのですが、だからこそ、この条件設定がかなりの肝であって、相当練るべきポイントになるのだろうと判断できます。ここではいろいろな条件設定が考えられますが、それが「友達が一定数以上いる」で本当にいいのか、それは自社がFacebook採用で取りたい人材像を証明するファクターになるのか、ということはよくよく考えなければならないでしょう。
個人的には、ここは友人の数など(の、やろうと思えば短期で可能な事象)で判断するのではなくて、かなり定性的つまりある程度の時間をかけて現れてくるもので判断せざるを得ないという気がしていて、だからかなり手数をかけるべき、それこそ肝の部分であると思っています。ソーシャルな場でのリテラシー(を判断する)とは、そういうものではないかと。
あまりお手軽な条件設定をつけてしまうことは、ソーシャルメディアを利用した採用活動の本質から外れた、“コミュニケーションの簡略化”っていうマス理論に走っていないかと危惧する感覚が常に必要だと思います。結局、面接する前にSPI(的な数値)で足切りをする、っていう発想と同じことになってやしないか?と。
Facebookを何に使うのか、と言えば、これまでのナビサイト就活とは異なる形で、ソーシャルな場に企業と学生さんとの多方向なコミュニケーションをつくることに目的があるはずで、そこを簡略化するスキームでは、お互いのメリットが生まれないのは明らかです。
採用枠をつくるのであれば、話題性とか、そこから派生する「数の確保」とか、そういったナビサイト採用の延長みたいな発想をカタチにするのではなくて、もう少ししっかりと、時間軸を長く取ったコミュニケーションが必要になるのではないか、そんなふうに考えています。
そういった前提のうえで、「枠」を設け、強制的に人数を確保していくのがいいと思うのです。
現在、枠を設けている企業はそのあたりを自社の戦略に照らして現状案を出しているはずだと、(勝手に)思っています。報道には出てこない、戦略の裏付けもあるはず。(と勝手に思ってます)
くれぐれも話題性が高いから、とか、よそもやっているからウチも、という理由で筋違いの事をしないようにしたいなと、自戒も込めて。
文責:人事・採用担当 浦野
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