2月14日に、人事担当者の方々向けのセミナーでスピーカーをさせていただきました。今回も「新卒採用とソーシャルメディア」がテーマです。
当社が2011採用ではツイッターを主に利用して行いましたのでその事例報告と、2012採用ではフェイスブックをメインで利用しているため、そのあたりも(途中経過としてですが)話させていただきました。そのときの資料をslideshareにアップしてあります。
(1)ソーシャルメディアが実名化していくことのインパクト
(2)ソーシャルメディア時代の、採用スタンスのつくり方
ソーシャルメディアの利用が実名か匿名かということは、採用活動への利用という場面で大きなポイントになるだろうと漠然と考えていたのですが、その結果は予想以上で、実はフェイスブックを使うまでそのことを実感できていなかったというのが本音のところです。また、企業側・学生側相互の露出度合いが一気に高くなったことで、企業側は採用スタンスを根本的に変える必要があるだろう、という理屈も徐々に言語化できてきたような気がしています。
詳しくは資料をご確認いただければ幸甚なのですが、上記の2点に絡めて当日話をしたことを文章に起こすとだいたい以下のようになります。
やけに長い文章になってしまったので、お時間あるときにでもご覧いただければと・・・^^;)
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■前提として
本題の前に、いつも前提としてお伝えしていることが2つあります。
【1】ソーシャルメディアを使うとかは目的ではなく手段(スライドP10)
ソーシャルメディアを利用するというのはツール論であり手段の話なので、そこを取り違えないように気をつけたいところです。ここ最近、「ソーシャルメディアを採用に使うのが素晴らしい」という分かりやすすぎる【手段の目的化】なハナシが色々なところで喧伝されてて…。
【2】すべての話は、ソーシャルメディアが「導入期」であるという時限的な話
ソーシャルメディアを使った採用云々の話って、結局のところ、そのソーシャルメディアが導入期であるからこそ言えることが多いと思っています。採用活動とはいえ広く捉えればマーケティングですから、この基本を忘れてはいけないと思います。
「facebook採用」をしたとある企業さんが、「ソーシャル力が高い学生は、リアル力も高い」とおっしゃっていました。
その言葉にだいたい同意なのですが、なぜそうだったのかという理由について考証がないまま言い切ってしまうのも少し乱暴かなと思います。
「ソーシャル力とリアル力に、プラスの相関関係があるとすれば、こういう理屈であろう」ということも、現在のソーシャルメディアが導入期であることを踏まえて考えられるべきだろうと思います。
・・・・・・そのようなことを踏まえつつ、上記(1)については、次のようなことを話しました。
■Web業界だけに当てはまる話ではない(スライドP18)
「新しいWebのサービスを使って採用できるのは、Web業界にとって好ましい人材だけでしょう?」と、時々質問されます。
この問いに、ツイッターをメインで使っているとき(去年あたり)は「確かに。業界によっては合わないケースもあると思いますよ~」という回答をしていたのですが、フェイスブック(というか実名でソーシャルメディアを使う人)を中心に見ていると、結論としては、決してWeb業界に限る話ではなくなってきなたなぁと感じています。
◆導入期ユーザーの3つの特徴
導入期のソーシャルメディアをいち早く利用し、その中で存在感を持つ層(イノベーター、アーリーアダプター)に多く見られるのは、コミュニケーションや新しい人間関係の構築という場面において取り掛かりが早く、現実社会においても活発に行動している人たちです。
その行動を観察すると、次のような3つの特徴に気づきます。
・新しい方法論や枠組みに柔軟で積極的(“これまでと異なる発想”への柔軟性・適応性が見られる)
・自分で情報を発信することによって、新しい場づくり(その場のルールや雰囲気づくり)を自然としている
・玉石混交な状態の中でも、玉をどう選択し、石をどうやり過ごすか、角を立てずに取捨する行動ができる
これらの行動(能力)をもつ人々が、ソーシャルメディアを活発に利用できている……というのが現在(導入期)において独特な状況です。
これらの特徴は、「Webサービスを使うのが早い」という意味にとどまらず、(現実社会にしろWebにしろ)「コミュニケーションや人間関係の場づくりにおける能動性」の発現に他ならないのだと思います。
◆導入期ユーザーの2つの能力
そして、上記のような使い方/行動を継続していくうえで、どうしても必要となる能力が2つあります。「社会性」と「論理性」です。
なぜなら、ソーシャルメディア上でのコミュニケーションは、自分の意見の表明に対する他者からのフィードバックありきで成り立つ場だからです。その前提をクリアするためには、「社会性」を持った対応と、「論理性」ある自己表明のいずれかがどうしても必要になるのです。
そして、この「社会性」と「論理性」という2つの能力は、これまでの採用担当者界隈で使われていたワーディングで言うところの、「リーダーシップ」の構成要素でもあるということに、気が付きます。
この「リーダーシップ」という資質は、人事アセスメントの世界で、社会に出てからの本人の成長と、プラスの相関が(業界とかに関係なく)はっきりと見て取れる、唯一の要素でもあります。
社会人としての成長要素であると、これまでの時代にも言われていた「リーダーシップ」というものの要件が、実はソーシャルメディアにおける必須リテラシーとほぼ共通している、、、!という大きな発見がここにあります。
このような検証を進めるにつけ、ソーシャルメディア上で活動している若者は、決してWeb業界だけに適した人材なのではなく、さまざまなフィールドで活躍し成長するための共通要素を持っている、そんな人材であろうと仮説しています。
実際にいろいろな業界に内定している方が多いですよね。
■実名ソーシャルメディアによって高度化(code化)される現実社会(スライドP34)
さらに上記の仮説は、ソーシャルメディアにおけるコミュニケーションの前提が「実名」になっていくことで、その確度を増しています。
匿名で行うコミュニケーションの場合は、現実社会との非同一性の担保が共通認識となっています。そのことで、ある時は真実の情報の流通が加速しますし、またある場面では自由な発言が促されるという価値が生まれます。しかしその半面で、現実社会の生産活動の適切さと切り離される可能性もあります。
いっぽう、実名で行うコミュニケーションの場合、前提は現実社会の自己との同一性であって、そこで発言や行動をするときに重視されるのは、自分の存在が繋がる現実のネットワークにリアルに反映されたり、良い影響を与えたりする、ということになります。
ソーシャルメディア上での言動については、一般にプライベートとパブリックが微妙に混じり合いますが、実名が前提の場合にはパブリックの度合いが一気に増します。
そのため、実名で行うコミュニケーションは、現実社会でのパブリックな行動能力や特徴がそのままソーシャルメディア上のコミュニケーションに反映されている可能性が高いのではないか、と考えられます。
そこに、「自分の名において責任をもって情報を発信し、他者からの玉石様々なフィードバックを受けとめる姿」が見られます。これが、新しい世代の感覚であり、これからの時代を支える姿であるように感じられます。
実名主義のフェイスブックを利用するのは、現実社会を切り離す行動ではなく、現実社会のネットワークをさらに高度化する(物理的・時間的な制約を越えたネットワーキングを実現する)ためであり、そのプロセスとして自分の現実の姿をフェイスブックという装置の中で「code化」しているということになる。
そのようなことから、実名のソーシャルメディアによって“高度化(code化)される現実社会”という掛け言葉を勝手につくってみました。
このようなことを考えていくと、採用活動への利用という側面において、実名主義のメディアが出てきたことの意味は大きいと感じています。
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(2)については、前回のエントリに記したものがほぼその土台となっています。つまりこれまでの「企業と学生の利害は背反するという考え方」と「新規顧客の獲得が前提」とを要件とする採用スタンスは、ソーシャルメディアの行動原則には沿わなくなってくるであろう、というものです。(スライドのP19-20、P23)
■おまけ:フェイスブック採用「枠」について(スライドP34)
以前も書いたのですが、一部の企業が行っているフェイスブック採用「枠」をつくるということに、個人的にそれほど興味を見いだせていません。
そこには色々な理由があるのですが、前回書いたのは、“何を評価するのか?”という点について、実施する企業の側が実はよく理解していないんじゃないか、という違和感でした。
例えば「応募条件はフレンド200人以上」とか「応募期間は12月まで」とか、そういう条件付けは、傍から見てて、どうもしっくりこない。
ただ、こと現時点に到って、もしも私が他社さんにフェイスブック採用「枠」について意見を求められるのであれば、最初の条件設定としてこんなことをアドバイスするかな?…と思っています。
【条件1】 自分が運営しているfacebookページのいいね!が100名以上
【条件2】 フレンドの20名以上から、フェイスブック上で推薦コメントを集めること
※それぞれの数字は可変
このフィルタリングなら、現時点で「ソーシャルメディアを本来的に理解し利用できている人材である」ことの確からしさが判別できるでしょう。
文責:人事・採用担当 浦野
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