就活生はどのくらいfacebookを使っている(いた)のか。
これまでに、このブログでは就活初期の10月、11月の数字を、定点観測としてお伝えしました。(ご参照⇒10月データ/11月データ)
今回は、就活が中~終盤戦を迎え、“ 就活のためにするアカウント作成 ” も一巡したと思われますので、2012就活生にとってfacebookは普及したツールであったのか?、より正しいユーザー数は?というような点での計測をしてみたいと思います。
今回も長~いので、まずはサマリを。
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★サマリ:
・facebookアカウント所有者は、大学生では17%を越える可能性あり =キャズム越え?
・しかしアクティブユーザー数が、かなり少ないのではないか =10人に1人程度かも?
・facebookを就活に利用できている層の少なさを、採用担当者はどう判断するべきか
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「定点観測」というより、ユーザー数を正確に把握するための、新たな推察ということになるかと思いますが、今回いろいろ調べてみて、これまでの定点観測では見えなかったことが数字的に見えてきたのではないか、と、そんなレポートになっています。
まずは、今回の趣旨から、統計資料として信頼度が高いデータを出発点にする必要があると思われ、
・facebookの公式データ
・国の統計(総務省/文部科学省)
の2つを基準にして、読み取れるところを見ていきたいと思います。
■公式データから読み取る世代データ:
facebookの公式データ(socialbakers)をまずは引用します。属性として年齢ゾーンしか判別できず、それも18歳~24歳という、大学生数を把握するのには微妙な線引きになっていますが、
それによると、
・日本国内でfacebookを利用しているユーザー数は 311万超
ということは、単純計算で18歳~24歳のfacebookユーザー数は 77.8万人です。
また、国の人口統計を引用すると、
・日本の18歳~24歳人口は、938万人 (2011年人口統計 総務省)
上記2つの指標から、
18歳~24歳の国内全人口における、facebookアカウント所有率: 8%
この年齢ゾーンの12.5人に1人の割合で、facebookアカウントを持っているということが読み取れます。
実際には、複数アカウントの存在などもそれなりにあると思いますので、現状での「MAXの数字」と捉えるのが良いでしょう。
では、もう一段すすんで、上記18歳~24歳でも「大学生」に絞った普及率という視点では、どうでしょうか。
■大学生(院生含む)や大卒者への普及率を推測:
ここ2~3年の大学進学率は47%程度(文部科学省)です。
それをあてはめると、18歳~24歳人口938万人×47%=440万人が大学生(院生含む)、もしくは大卒社会人(の1~2年目)の合計値ということになります。
ここで、18歳~24歳のfacebookユーザー(77.8万人)が、ほぼ大学生もしくは大卒であると仮定した場合、
人口440万人のうちの77.8万人がユーザーなので、
・18歳~24歳の大学生および大卒社会人のfacebookアカウント所有率: 17.7%
という、ひとつの指針となる数字が出てきます。
あくまで、「facebookを使う層は100%近く大学生以上だろう」という勝手な推測によって成り立っていますが、facebookの性質からこの推測がおおきくずれているということも考えづらく、個人的には、18歳~24歳の、大学生および大卒社会人に対して、facebookが17%程度の普及率は可能性としてもっている、と考えて良いのではないかと思います。
キャズム越えの理論値が16.0%なのだとすれば、今年に入っていよいよ、facebookは大学生/大卒マーケットでキャズム越えの可能性……と判断をする人が出てきて良さそうなラインになっています。
■大学生や就活生への普及率へさらにドリルダウン:
さらに、18歳~24歳を、大学生かそれ以外(大卒社会人など)か、という判別をしてみます。
・日本の大学生総数は 約270万人 (2011年統計 文部科学省)
・ゆえに、18歳~24歳の大学生以外の人口は 約170万人 (※440万人-270万人=170万人)
また、
・就活生人口は63万人(文部科学省)
という数字から、それぞれ単純に17.7%を掛け算して、
・大学生のユーザー数 47.8万人
(うち、就活生ユーザー数 11.2万人)
・大学生以外(若手社会人など)のユーザー数 30.1万人
くらいではないかと、おおよその推測を付けられるかと思います。
キャズム越えが持つ意味としては、もちろん、これから多くの人々が使う普及期に入ってくる=ますます母集団が膨らんでくる、という意味が大きいのですが、採用担当者がここで捉えるべきは、「イノベーター/アーリーアダプター層に対してのカバー率が、ほぼ100%に達した」という視点だと思います。
ここまでで、いくつかの仮定・推論の議論はあるものの、公式なデータから導き出される「大学生や就活生への普及率」を見てみました。半年前と比べると、その成長に驚きます。
さて、ここまでの数字は、表面的に見えている数字をなるべく正確に、でも単純に割り出してみよう、というものでした。
ここからは、その数字からさらに定性的な部分も見えないだろうか、という点に踏み込んでいきたいと思うのです。11万人いたとしても、どういう使い方しているのか。就活には活用されているのか。
■就活生ユーザー数を定点観測:
これまでこのブログで行ってきた定点観測(10月と11月)の方法に準拠し、就活生への普及について、半年前(2010年11月=就活前半戦)との比較という点も踏まえて話を進めたいと思います。
以下(1)(2)のデータは、facebookページの広告配信システムがはじき出す「配信予定数」を基準にしています。
前回の定点観測の際に私が指摘したのは、この配信システムの数字の不確実さ、それゆえ必要となるであろう推測の方法論でした。(出てくる数字が少なすぎるように思われるため)
そのことも踏まえて、数字をまずは見てください。
2011年5月11日現在の、ユーザー数:
(1)日本在住の大学生・専門校生で2012年卒
14,200人
cf.
11月22日時点では9,560人
10月20日時点では7,940人
(2)日本在住の大学生・専門校生で2011~2013年卒
49,660人
cf.
11月22日時点では23,220人
10月20日時点では20,260人
確かに、2012就活生の数字(1)も伸びてはいるのですが、その前後の世代を含めた数字(2)の伸び率と比較するとずいぶん下回っています。
2012就活生の伸び率よりも、新社会人もしくは2013就活生の伸び率のいずれか(もしくは両方)の伸び率のほうが高い。
ここから、2012就活生の利用がfacebookユーザー増進の要因とは関係ないということが分かり、「就活のためにfacebookのアカウントをつくりました!」という人たちは、相対的にも、それほど多いとは言えないだろう、という推察が成り立ってきそうです。
そして、さらにここでもう一つの事実。この広告配信DBで出てくる数字が全体的に小さすぎるのではないか、、、というのが前回(10月、11月定点観測時)まで前提としていた「疑問」だったのですが、実際のところ、この広告配信DBは正確な数字を出しているのかもしれない---ということが分かってきました。
■データの不確実さと見直しについて:
例えば、広告配信DBで「日本に住んでいる18歳~24歳」の数字を出してみます。
76万人。。。公式データ(778,895人)とほぼ同じだ。。。とすると、広告配信DBの数字って、実はキチンと算出されているのではないか!これまでは信用していなかった上記(1)や(2)の絶対数ですが、この数字には信用をおくべきではないのか、と。
※後日註:ここの論理展開に一部勘違いがありましたので、こちらで修正をしました。
このあとの結論には影響ありませんが、後ほど併せてご確認ください
そうして考えてみると、一方で(普及率17.7%の数字を使って)算出した就活生ユーザー数=11.1万人 と、(1)の2012就活生ユーザー数=1.4万人は、明らかに数字が離れすぎています。
前回まで疑っていた、1.4万人という数字のほうが実は正しいのだとすると、考慮するべきは、facebookのDBの問題ではなく、ユーザー側のアカウント設定の問題ではないか、ということになってきます。
いよいよ定性的な側面、つまり、「みんな本気でfacebookを使っているのか??/特に、就活生のfacebookユーザーは、本気で就活に活用しようとしているのか?」という面を捉えてみる必要が出てきます。
■就活生への普及の実態(?):
社会人(22歳~25歳)と学生(18歳~21歳)のアカウント設定意識を考えてみるために、以下の数字を広告配信DBで調べてみました。
・18歳~24歳(公式データでは77.6万人)の内訳として、
(a) 大卒(社会人)とアカウント明記している :287,100人
(b) 大学生・専門生とアカウント明記している:67,800人
(c) 高校生とアカウント明記している :11,600人
まず、(b)より(a)が随分と大きい事に気が付きます。大学生より社会人の数が随分多い。そして、(a)(b)(c)合計しても、366,500人です。
全アカウント数(77.6万)との差から、上記(a)~(c)の属性をアカウントに登録していない人が、41万人(半分以上)もいる、ということが明確になります。
もちろん、もうひとつの可能性として、上記(a)~(c)のカテゴリ以外の人(高卒社会人など)の存在も考慮にいれなければなりませんが、それはそんなに多いはずがないので、18歳~24歳のfacebookユーザーのうち、学歴・学校名を登録していない人が半数以上にのぼる---、と判断して良いでしょう。
さらに(b)から、「大学生」であるのに「自分の属性を登録していない人」に絞って考えると、(先の推論で「大学生ユーザー数=47.8万」でしたから)全アカウントのうち15%くらいしか、自分の属性=大学を明らかにしていない、ということになります。
学歴を登録していない原因を分類してみると、
・あえて記入していない(プライベートを守るためetc.)
・記入することを知らない (それほどきちんと使おうと思っていない)
・アカウントをつくってみただけで放置 (アクセスしたのが1~2回、とか)
の、いずれかに入ると思います。
これらは、少なくとも「就活に使ってます!」という人たちの行動パターンではない。
■ここまでの結果から:
・就活生の年齢ゾーンで、facebookの認知度(アカウント所有ポテンシャル)は11万人
・就活生のうち、facebookのアクティブユーザーは、1.4万人程度
・伸長率からも、就活生が特に際立ってアカウント数を伸ばしているということはない
という結論が出てきます。
採用担当者からしてみれば、実際のアカウント数よりも、アクティブユーザーがターゲットになると思いますので、1.4万という数字をどう見るか、そして、11万人と1.4万人の数字の乖離をどうとらえるかが、facebookを採用活動に活用する際の判断ポイントとなりそうです。
■アクティブユーザー1.4万について:
個人的には、ひとつのソーシャルなプラットフォームで1万人以上がアクティブに動くクラスタって「就活」くらいしかないんじゃないか、という感想を持ちます。
そう考えると、これは大きな数字であると。
また、自分の会社が新卒採用でアプローチするべき母集団数って、いくら大きくても1万人を越えることはないと思うので、「ソーシャルな場で/アクティブに活動できる」人が1.4万人もターゲティングされているfacebookは、魅力的です。
ユーザーとしての参入障壁がある程度高いことは、かえって、中小やベンチャー企業が(大企業の採用ロジックとは差別化された)アプローチを行ううえで、魅力的なファクターではないか、と思うのですが、いかがでしょうか。
■最後に、採用担当者の方に:
今回の数字は、あくまでも推論が重なっていますが、私がこの定点観測で伝えたいことのひとつとして、数字の完全な正確さというよりも、あたらしいツールを活用するにあたっての自社なりの判断指標を明確に持つ重要性、ということがあります。
数字から見えてくる概観や定性的な推測を、自分で算出してみて掴んでおくのも、そのためのひとつの行為だと思います。
そういうのがないと、使ったことがない新しいツールのROIは戦略の中で設定しづらいですし、他社のやっている面白そうな事例とか、世の中の様々な喧伝に、不必要に振り回されてしまうと思います。
さまざまな採用コンサル企業は、都合のよい情報しか見せてきませんし。そういうときに、「でも、実態はこうだよね。そのうえで、私はこう見ているよ。だからこういう使い方をしようと思う」という判断をできるようにしたい、と思っています。
数字自体が、多いとか少ないとか、もしくは多いから良いのか、少ないからダメなのか、それは採用戦略や目的によって相対的に判断が変わってきます。
惑わされず、自社なりの明確な判断をする---今回の数字は、そんなときの資料のひとつにでもしていただけると幸甚です。
P.S.
とはいえ、数値分析のプロの目からはかなり甘い分析っぽいー。恥かしいなー。でも公開します。
間違いとかお気づきの点、ぜひフィードバックください!
文責:人事・採用担当 浦野
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