とある大学4年生の12月2日のツイート。
Facebook(などのソーシャルツール)で情報発信する企業が増加してます。というような話題が、テレビや雑誌、Web上で多く取り上げられています。
それを支援する業者も増え、実際に多くの企業がFacebookやtwitterに乗り出していますが、そこで起きていることの根底にあるは、このツイートが示すような「1年後の君たちには用がありません」、という思想なのでしょうか。
企業がFacebookで情報発信をする際、採用担当者がよく言うのは「フレンドリーな姿を表現できる」というようなことです。でも、その一方では、「フォローを外す」という行為に平気で及んでしまう。それは一般のマーケティングの場面では到底考えられないことのはずですが、採用現場に限っては平気で起こってしまっているようです。
■Facebookを使う意味はあるか
なにもFacebookに限った話ではないのですが、ツールが新しければこれまでの課題が何か解決するのかといえば、そんなことはないでしょう。それを使えば結果が出るわけでも、全然ない。
自らの思想やポリシーを表現するための手段として、ツールが選択され、使われるはずです。まずは実現するべき思想やポリシーがないことには始まりません。
採用の場面で(Facebook/twitter/Ustream/ブログ…などの)ソーシャルツールが選択される意味があるすれば、それらが「信頼関係の構築」を強く意識する思想やポリシーを具体化できるからにほかなりません。一方で、コントロール的な関係構築による「数の確保」を至上命題に掲げるナビサイトは、この点が設計思想として決定的に欠落しています。それが今の採用活動・就職活動の問題点として顕在化しているものでもあります。だから、その点を解決しようとするところに、ソーシャルツールを使うことの意味が見えてきます。
信頼関係など、まるで必要ないかのような(数を集めるのが目的で、1年後にはフォローは平気で解除するような)ポリシーで行われる採用活動が相変わらずだとすれば、それはただ目先のツールを変えたというだけの意味しかなく、ソーシャル上の活動によって大きな価値がもたらされることはないだろうと思います。であれば、それはナビサイトのほうでやったほうが、効率がいいですし、ソーシャルについてまわるリスクもないでしょう。
■目的と手段の整合性
なぜ、新たなツールを使うのか。
基本的なことですが、目的・課題・手段というすべての実践に一本の筋を通すというのが現場の担当者としてまず考えるべきところ(責任)です。それをどれだけ正しく理解し明確にできているかが、事の成否を分けているポイントだと思います。
・【目的】自らの思想やポリシーが明確になっているか
・【課題】目的が充分かなえられていない本当の理由は何か
・【手段】課題解決に適した手段を選択し、適した運用をしているか
目的も課題も「ソーシャル」とは程遠いところにありながら、手段だけソーシャルツールでなんとかなるだろうというのは筋が通らない。「ソーシャル」がはらむ性質を考えると、それはリスクにすらなりかねません。
例えば炎上が発生するほとんどのケースがこれに当てはまります。目的・課題のいずれかが(もしくはすべてが)「ソーシャル」にはそぐわないにも関わらず、手段として「ソーシャル」を選択し活動してしまったというところがほとんどの原因です。
いま起きている現象は、「(倫理憲章のあおりで)オープンを2カ月遅らせたナビサイトの代わりの情報発信ツール」、つまり既存メディアの延長線上でFacebookを使う企業が増えたというだけなのでしょうか。もしそうだとすれば、“ 経団連がそう決めちゃったから、とりあえず何かしないと ”・・・という局所的・受動的・対処療法的な採用担当者の姿が「Facebookに採用ページ作りました!」ブームによって白日の下にさらされたのだと言われても、反論できないように思います。
(余談ですが、例えば「採用広告を高い料金で出したのに、ぜんぜん人が集まらない、どういうことだ」といって採用担当者が求人媒体の担当者を怒ったりするケースもあるようですが、上記の目的・課題の明確化と手段の選択は採用担当者がそのミッションとして負うべき責任であって、その選択責任を理解していれば、媒体側を怒る理由などないということも明確だと思います。すみません余談でした。)
■あらためて「フォローをはずす」ことの意味
企業がソーシャルな場で活動しようというのであれば、「フォローをはずす」ということが、自分たちの何を示す行為なのか、採用担当者はもう少しきちんとその意味を考えたほうがいいです。
Facebookページを作った多くの企業が「採用の時期が終了したら関係はおしまい」「だからフォローをはずすのが当然の選択」という発想でいるとすれば、それは、企業がソーシャルな場に出ていってまで構築するものとは1年間限定の「いい関係」に過ぎないのだと宣言しているということでしょう。これは、「関係の使い捨て」という思想の表出であると指摘せざるをえません。
これほどコミュニケーションの相手を軽視した発想もないでしょう。
以前、「リクナビ型」と「みん就型」モデルが、ソーシャル時代に抱える共通課題というエントリーにも示しましたが、一見(いちげん)さんを追い求め続けるようなマーケティングは、ソーシャル化される時代にはもう通用しないということを肝に銘じるべきではないかと考えます。少しだけ長い目で状況を観察する採用担当者にとって、自らのミッションが「新規顧客の獲得合戦」なのだとすれば、その将来性のなさに対する危機感しか生まないはずだと思います。
また、今回は詳しく言及しませんが、この話は、新卒採用チームと中途採用チームの活動が別々だったり、組織チームと育成チームと採用チームが別々のポリシーだったり、人事とマーケティングと広報がばらばらだったりといういう状況への違和感や、変化へと繋がっていくべきものでしょう。世界を構成するアーキテクチャの変化や、ユーザーの求めるものの変化を捉え、企業がこれまで作ってきた組織編成やミッション構造の変化に対して、人事や採用担当者の意識は向かうべきだと思っています。
■最後に
ユーザーとの関係を使い捨てにする行為に無頓着な企業や採用担当者にどのような未来があるのか、私などがあれこれ言うべきことではないのですが、それでも「人と企業の関係を考え直すため」に、「その入り口である採用現場を革新しよう」と、「ソーシャルなマインドで設計・実践てきた」採用現場の多くの人たちのこれまでの努力が、この1年で飲み込まれてしまわないかと心配になったりしています。だから、私のような小さな立場からでも、少しはいろいろ提示したい。そんなことを2013新卒のスタートに際して考えています。
文責:人事・採用担当 浦野
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